犯罪者の氣持

犯罪者の氣持、なんて一括りにはしたくない。その人らはたまたま犯罪者になつただけで――下品な惡意から、人を突落して來た連中なんて、このサイトにはいくらでもゐるでしよ。ただ犯罪になつてゐないだけで。私は――ある時犯罪者と話した事がある。彼は人々の嚴しい監視や警吿を、笑つてゐた。だつて俺には性慾が無いからね、何したつて無駄なんだぢやあ、どうして强姦したの?その女がむかついたから。――できなかつたら、毆るなり何なりしてた。それから一緖にゐてこはくないのと言はれた。私たちはカラオケにゐた。こんな話、人がゐるところぢやできないから。私から誘つた。すごく、近い。數センチの間しかなかつた。誘つてゐるの。私は赤面した。身體に震へが走つた。私はそれを悟られまいと、必死だつた。何でこんなに近いのだつて、こはがつてるつて、相手に思はせたくないから。私は言つた。彼が興味深さうな眼で、私の顏をじろじろと見た。まあさういふ女もゐるよね、變つた男と遊んでみたい女私は……確かに男が好きだけど、勿論强姦されたいわけぢやないよぢやあ、俺が誘つたら。私は、彼とホテルにゐるところを思ひ浮べ、それから好きな人を思ひ浮べた。しないよふうん、他の日は。彼には私の考へが分つてゐる。あたしは、普通のセックスはしない人間だから普通のセックスつて。彼が笑つた。いれるセックス。煙草の臭ひのせゐで、頭が痛くて仕方が無かつた。煙草、やめてくれる?。私は立つた。どこ行くのトイレ。彼は灰皿に煙草をなすりつけた。廊下の空氣は、ひんやりして、新鮮に思へた。トイレから歸つて來ると、ココアとメロンソーダは半分になつたままで、その間にはくしやくしやの千圓札が置かれてゐた。どうしたの、これ俺、歸るよどうして……今日は、ありがと。樂しかつたよ。彼とはそれきりだつた。犯罪者になつた人との會話は、ぽつんとして、寂しくて、呆氣無かつた。