0:57 犯罪者の氣持、なんて一括りにはしたくない。その人らはたまたま犯罪者になつただけで——下品な惡意から、人を突落して來た連中なんて、このサイトにはいくらでもゐるでしよ。ただ犯罪になつてゐないだけで。私は——ある時犯罪者と話した事がある。
0:59 俺には性慾が無いからね、何したつて無駄なんだ。ぢやあ、どうして强姦したの?。その女がむかついたから。できなかつたら、毆るなり何なりしてた。それから、こはくないのと言はれた。
1:04 私たちはカラオケにゐた。こんな話、人がゐるところぢやできないから。すごく、近い。數センチの間しかなかつた。誘つてゐるの。私は赤面した。體に震へが走つた。何でこんなに近いの。
1:09 だつて、こはがつてるつて、相手に思はせたくないから。私は言つた。彼が、じろじろと私の顏を見た。私は……確かに男が好きだけど、勿論强姦されたいわけぢやないよ。ぢやあ、俺が誘つたら。
1:10 私は、彼とホテルにゐるところを思ひ浮べ、それから好きな人を思ひ浮べた。しないよ。ふうん、他の日は。あたしは、普通のセックスはしない人間だから。普通のセックスつて。彼が笑つた。いれるセックス。
1:11 煙草の臭ひのせゐで、頭が痛くて仕方が無かつた。煙草、やめてくれる?。私は立つた。どこ行くの。トイレ。廊下の空氣は、ひんやりして、新鮮に思へた。
1:13 トイレから歸つて來ると、テーブルの上に、くしやくしやの千圓札が置かれてゐた。どうしたの、これ。俺、歸るよ。どうして。
1:13 今日は、ありがと。樂しかつたよ。彼とはそれきりだつた。犯罪者になつた人との會話は、呆氣無かつた。
2:10 皆セックスの事ばかり考へてるのね。彼がセックスできないから歸つたと思つてるのね。分つてるくせに。普遍性。
2:11 ほら、犯罪者と話した女の言葉ここに散る、犯罪心理分析者の皆樣、御苦勞樣です。ああ、犯罪者ども。
2:11 誰かが私を、犯罪者と呼んだ。
2:11 犯罪者は言つた。おやすみ