- 成人《對《象《 — 二十歲《以《上《の讀《者《を對《象《とする
- 小《說《(フィクション) — 實《在《の事《柄《とは關《は《り無《し、描《寫《中《の行《爲《を獎《めるもので無《し
- 性《描《寫《 — 性《行《爲《の描《寫《を含《む
連行
逮捕する
兩手首を摑んで本當に手錠を掛けてやると、淺井はにやにやとした。元はと言へばただのバイト、ATMの前で固まつてゐる老人に聲を掛けたばつかりに、彼女は突然、表彰される事になつた。署長と寫眞を撮つて、地方の新聞の隅つこを飾り、事件を擔當した刑事に奬められるまま、試驗を受けたのだ——よく訓練を耐へられたと思ふ程の細い體附き、このやうにつんと——指先で押した——してしまへば、簡單に伏してしまふ女だと言ふのに。現場では必要な事を、的確に、控《目《に言ふ女だつた。しかし署內に戾つてお決りの位置に戾ると、途端寡默な、內氣な——といふのはかはい過ぎる表現か——一人紛れ込んだOLのやうな有象無象感、眼が合つたらへらへら笑つてゐるやうな、どこか精神の不自由さを聯想させる、得體の知れない女になる。
何で連行されたか、解るか? 淺井?
女は急に出て來た上司《に眼は見開きはしたが何も言はなかつたし、乘れとだけ言はれても、向ふ先がどんなに理不盡で滑稽であつたとしても、口を挾まなかつた。
彼女は首を振つた。私にも、何故この女が氣に留つてしまつたか解らない、いや、勘といふ奴だらうか、やばい奴といふ勘が——さう、やばい奴ぢやないか?
實のところ、私は自分をやばい奴と認識してゐる。
淺井——
私はそのまま、腕を突出してゐた。自分が何に手を重ねてゐるか、判つてゐない。判つてゐる。私は惡德警官なのだ。
これから取調べをする
その皮を一枚一枚剝がしながら、彼女を取調べてみる。いつものやうに。かうした時の、被疑者《の反應は。眼は。唇は。手は。何もかもが絲口《であり、自供だつた。彼女の皮など高《が知れてゐる、命令《しか著《熟《せない彼女は——しかし核心に觸れたとしても無反應でゐる、さういふ厄介さを、淺井は持つてゐるかも知れなかつた。さういふ被疑者と相對した時、私はどうするか。決つてゐる。
御前に默祕權は無いんだからな、解るだろ、私の言ひたい事が?
——御前に何を語らせたいか?
……何の寄る邊も無い迷ひ子は、にやにや笑ひを止めて、口を開いた——
さうして、私を忌《まはしき畔《まで連行した罰を、この女に與へる。私の悅びを以《て。