萬人に對應する代名詞を探す

English language version:Looking for pronouns for everyone

私は單純に、萬人に使用できる人稱代名詞を求めてゐたが、現狀、その解は得られなかつた。文脈の中で「その人」を特定できる代名詞が欲しかつたのだが、恐ろしい事に、ただ人間と呼び掛ける、たつたその言葉さへ、我々の長い歷史の中で開發されてはゐなかつたのだ。(あるのかも知れないが、人々が何を使用するか「議論」してゐる事實を見るに、それは浸透しなかつた。)

實在する人物は名前で呼ぶ——それが私の得た無難な解だつた。要するに、實生活において、個人に對する三人稱單數の人稱代名詞は使用しないといふ事だ。(he, she, person等)

誰をどう呼んだとしても、私が他人である以上、その人を滿足させる事はできない。

多くの人々は“person/per”さへ知らないし、それでさへ氣に入らない人もゐるだらう。

實際のところ、話題が人物の性別を必要としないなら、我々はそれ無しで會話できるはずだ。實名、國籍、社會的地位、收入などと同じやうに。そもそも、なぜ我々は自らを性別に基づいた代名詞で呼ぶのだらう? それは常に必要な情報だらうか?

實用の面で

嚴密に言へば、私は生物に對する三人稱單數の代名詞を探してゐる。我々は“he”や“彼女she”を見聞きした時、その言及對象が人物だと明確に判る。この點において、“they”や“it”は無生物も指すため、曖昧だ。日常生活(特に緊急を要する場面)ではこの區別が重要となる。

例へば、時間に制限があり、“It's in there.”としか言へなかつた場合、警官や消防士は“it”が人であると理解できるのか? 同じく單數のtheyが正確に傳はるのか、非ネイティヴの場合文法ミスと誤解されないか、といふ懸念がある。確かに他の言葉を使へば良いのだらうが、それは單數の“they”や“it”が人の代名詞として役に立つてゐない事を意味する。

既存の代名詞に新しい用法を設けるなら、我々は新舊の用法を正確に識別できる必要がある。緊急時は文脈を考へてゐる時間など無い——この事からも、我々に必要なのは明瞭な人稱代名詞だと解るだらう。

そして、人命にも關はる以上、代名詞(及びその用法)は、一部のコミュニティに限定したルールであつてはならない。つまり、新しい代名詞(あるいは用法)は、“he”や“she”と同等の基礎的な名詞(用法)になる。英語の話者全員に影響を及ぼすのだ。皆が中立の代名詞を模索し、多くの提案があるが、英語の文法として正式に採用できるのは(現實的な浸透具合から言つても)そのうちの一つか二つだけだらう。

勿論どんな代名詞があつたつて良いが、私が探してゐるのは、人々の主張に關はらず使へる代名詞だ。それが人名を使はうと思つた理由でもある。

代名詞を使用しない實例

日本語の場合、主語や所有格を省略しても不自然にならないため、幾らかは樂である。

個人的な經驗から言ふと、日本語で「彼」「彼女」と表現する事は實生活では殆ど無くて、人稱代名詞で困つたのは小說の執筆くらゐだつた——小說では、キャラクターの行動、思考、狀況、その他物語に必要な情報を逐一表現する必要がある。それもジャンルがSFやファンタジーなら幾らでも造語できるので、一番難しいのは現實世界を舞臺にしたフィクションだ。

恐らく私が「彼」「彼女」を實生活で用ゐる機會が少ないのは、それらの代名詞が目上の人(あるいは知らない人)には使ひ辛い事が起因してゐる。身近なところで言つても、親や敎師を「彼」「彼女」と呼ぶ事なんて殆ど無いんぢやないだらうか。代りに地位(役割)か名前で呼んでゐる。